いざな丑生成AIによって「作業」の価値が下がるほど、システム開発会社には業務理解・設計・提案・実装・運用の価値が求められる。発注側も「AIかベンダか」の二者択一ではなく、AI・社内・システム会社の役割を組み直すことで、より大きなDXのシナジーを生み出せる。




生成AIで「何でもシステム会社に聞く時代」は終わりつつある
かつて、多くの中小企業にとって、お抱えや馴染みのシステム会社は「ITのことなら何でも相談する相手」でした。



メールが送れない。



共有フォルダに入れない。



Excelがおかしくなった。



新しいPCを導入したい。



便利な業務システムを探してほしい。



「こんな仕組みを作れない?」
「この業務をもっと効率化できない?」
といった相談まで。
社内に専門のIT人材が少ない企業では、身近なシステム会社が実質的な「外部IT部門」のような役割を果たしてきたケースも少なくありません。
まちみらい不動産にとって、卯ソフト開発もそんな存在でした。
創業間もない頃から会社のIT環境を知り、社員を知り、業務を知り、会社の成長とともに必要になったシステムを支えてきました。
「まずAIに聞いてみる」が当たり前になった
以前ならシステム会社へ問い合わせていたようなことでも、今は生成AIで解決できるケースが増えています。
例えば、
- Excel関数を作る
- エラー表示の意味を調べる
- ソフトの設定方法を調べる
- マニュアルを要約する
- 簡単なコードのたたき台を作る
- 業務改善のアイデアを考える
といった領域です。
社員自身がAIに質問し、その場で解決できる。
DX担当者が簡単なツールを試作する。
以前なら外注していた小さな作業を社内で処理する。
これは企業にとって、とても良い変化です。
一方でシステム会社から見ると、



以前まで来ていた相談が来なくなる
という現象でもあります。
卯ソフト開発の卯社長が感じていた不安も、まさにそこにありました。
「AIでできるなら、システム会社はいらない」は少し判断が速い
まちみらい不動産でも、ある日そんな議論が起こりました。
売上が少し芳しくなかった月。
経費を眺めていた夢見巳社長が、卯ソフト開発への委託費を見ながら言います。



もうAIでいろいろできるんだから、ここもいらないんじゃない?
数字だけを見れば、そう考えたくなることもあるでしょう。
実際、生成AIによって外部へ依頼する必要がなくなる仕事はあります。
だから、契約内容や費用を一切見直してはいけない、という話でもありません。
AIが減らすのは「システム会社」ではなく、一部の作業かもしれない
面談の日。
契約終了や縮小を覚悟して会議室へやってきた卯社長に、いざな丑は問いかけました。



以前、まちみらい不動産から来ていた相談の中で、AIでも解決できるものは確かに増えました



やっぱり・・・
卯社長は小さくうなずきます。



でも、卯ソフト開発さんの価値って、本当に“質問に答えること”だけでしょうか?
横にいた整え鼠も続けます。



長年の運用を知っている。
なぜ現在のシステム構成になったのか知っている。
過去にどんな問題が起きたのか知っている。
社内の業務や、不動産会社特有の事情を理解している。
そして、それを実際に動く仕組みに変えられるエンジニアがいる。



生成AIがどれだけ進化しても、こうした知識や経験が突然ゼロになるわけではありません。
むしろ、
「作ること」が簡単になるほど、「何を、なぜ、どのように作るか」を判断する力の価値は高くなります。


生成AI時代のシステム会社に求められる価値は変わる
一方で、システム会社側も何も変わらなくてよいわけではありません。
これまで、
「お客様から依頼が来たら対応する」
「言われたシステムを作る」
「トラブルが起きたら直す」
という受け身の仕事だけで成り立っていた会社ほど、生成AIの影響を受けやすくなるでしょう。
これからより重要になるのは、
「何を作るか」ではなく、「何を作るべきか」まで一緒に考えられることです。
例えば顧客から、
「こんなシステムを作ってほしい」
と言われたとき。
本当にシステムを作る必要があるのか。
既存ツールで十分ではないか。
生成AIを使った方がよいのか。
そもそも業務フローを変えた方がよいのか。
長年その企業を見てきたシステム会社だからこそ、言えることがあります。
場合によっては、
「それは作らない方がいいと思います」
と言うことも、専門家としての重要な価値です。
「何でもYESと言うベンダ」から「提案するパートナー」へ
卯社長には、一つ弱点がありました。
まちみらい不動産から、
「これできますか?」
と聞かれると、難しい内容でもなかなかNOと言えません。
長く付き合っているお客様だからこそ、期待に応えたい。
その気持ちが強すぎて、つい要望をそのまま持ち帰ってしまいます。
しかし生成AI時代には、この関係も少し変えていく必要があります。
お客様に言われたものを作る会社から、
お客様自身も気づいていない課題を一緒に考える会社へ。
「できます」だけではなく、
「できますが、この方法はおすすめしません」
「目的がこれなら、もっと簡単な方法があります」
「ここはAIで内製し、こちらだけ私たちが担当した方がよいと思います」
と提案できる。
そんなシステム会社の方が、生成AI時代にはむしろ頼れる存在になっていくはずです。
発注する企業側も「付き合い方」を変える必要がある
変わる必要があるのは、ベンダだけではありません。
発注する企業側も同じです。
これまでのように、
困ったら電話する。
欲しいものを伝えて見積を取る。
完成したものを使う。
という関係だけでは、せっかくの外部パートナーの知識を十分に活用できません。
特に、長年取引しているシステム会社には、自社では当たり前になっていて気づかない情報が蓄積されています。
過去のシステム変更。
業務上の癖。
現場が困りやすいポイント。
過去にうまくいかなかった取り組み。
既存システム同士の関係。
こうした**「会社の文脈」**は、新しい会社へ発注書を渡しただけでは簡単に移せるものではありません。
だからといって、
「昔からの付き合いだから契約を続けよう」
という話でもありません。
重要なのは、



これから会社が目指す方向に対して、そのシステム会社がどんな価値を提供できるのかを改めて考えることです。
AI・社内・システム会社は競争相手ではない
生成AI時代のDXを考えるとき、
「内製するか、外注するか」
「AIを使うか、人に頼むか」
という二択で考えてしまいがちです。
しかし実際には、それぞれ得意なことが違います。
| 担い手 | 主に担う領域 |
|---|---|
| 生成AI | 調査、整理、文章化、アイデア出し、たたき台、簡易な試作 |
| 社内 | 経営判断、業務知識、目的設定、優先順位、現場ルール |
| システム会社 | 専門設計、システム連携、本番実装、安定運用、保守、技術的な判断 |
| DX推進・外部専門人材 | 全体設計、課題整理、役割分担、経営・現場・ベンダの橋渡し |
すべてをAIに任せる必要もありません。
すべてをシステム会社へ外注する必要もありません。
すべてを社内で抱える必要もありません。
「誰がやるか」ではなく、「何を誰に任せると最も価値が出るか」。
ここを再設計することが、生成AI時代のDXでは重要になります。
「相談が減った」のは、価値がなくなったからではない
話を聞いていた卯社長が、ぽつりと言いました。



相談が減ったから……必要とされなくなっていると思っていました
いざな丑は答えます。



昔と同じ相談は、これからもっと減ると思います
卯社長、再び不安そうな表情。
そこで、いざな丑が続けます。



でも、それは卯ソフト開発さんの価値が減るという意味ではありません
相談される内容を変えていけばいいんです。
PCの設定方法を聞かれる会社から。
言われたシステムを作る会社から。
会社のこれからを理解し、ITやAIを使ってどう実現するかを一緒に考える会社へ。
卯ソフト開発が長年積み重ねてきた顧客理解と技術力は、そのために使うことができます。
生成AIは「ベンダを不要にする技術」ではなく、関係を進化させるきっかけ
生成AIによって、これまで専門家に頼まなければできなかった仕事の一部が民主化されていくことは間違いありません。
その結果、企業とシステム会社の関係も変わります。
しかしそれは、
「AIがあるからベンダを切る」
という単純な話ではありません。
むしろ、
社内でできることが増えたからこそ、外部の専門家にはより専門的な仕事を任せる。
AIで試作が速くなったからこそ、ベンダと一緒に改善サイクルを速くする。
長年の業務理解と最新技術を組み合わせ、新しい提案をしてもらう。
そんな関係へ変えていくチャンスでもあります。
生成AIによって問われているのは、
システム会社が必要か不要かではなく、「これから何を期待するのか」です。
そして同時にシステム会社側にも、
「これから顧客にどんな価値を提供するのか」
が問われています。
まとめ
夢見巳社長の、



AIがあるなら、もういらないんじゃない?
という何気ない一言から始まった今回の話。
結論は、「契約を残す」「切る」という二択ではありませんでした。
生成AIでできる仕事が増えれば、これまでの契約内容や役割を見直す必要はあります。
一方で、企業の業務を深く理解し、専門技術を持ち、長く伴走してきたシステム会社には、AIだけでは簡単に置き換えられない価値もあります。
だからこそ必要なのは、



AI・社内・システム会社、それぞれの役割をもう一度設計すること。
生成AI時代だからこそ、システム会社との付き合い方をアップデートする。
そこから、これまで以上のDXのシナジーが生まれるかもしれません。
既存ベンダとの関係、生成AI時代に合わせて整理できていますか?
生成AIの活用が進むほど、
- これまで外注していた仕事をどこまで内製するのか
- 既存のシステム会社には今後何をお願いするのか
- AIと既存システムをどう組み合わせるのか
- ベンダとの契約や役割をどう見直すのか
- DX推進担当者がどこまで担うのか
といった整理が必要になります。
一方で、その答えは企業の業務内容、既存システム、社内人材、ベンダとの関係によって異なります。
「AIを導入する」だけでも、「ベンダを変える」だけでも、DXの全体最適にはなりません。
自社ではどこまで内製し、どこから専門家と連携すべきなのか。
既存ベンダの強みをどう生かしながら、次の関係へ変えていくのか。
DX・生成AI活用とあわせて、システム会社との役割分担や今後の進め方を整理したい企業は、ぜひご相談ください。
考え方と方向性を整理し、自社に合ったDXの進め方を一緒に設計します。


上記フォームは不動産・住宅会社からの問い合わせ専用です。営業や協業、ベンダからの送信はご遠慮ください。
記事の企画・監修
DXコンサルタント 蓼沼 康之(たでぬま やすゆき)
株式会社いざなう 代表取締役社長
<経歴>
不動産デベロッパーにてIT・DX推進部門の立ち上げや業務改革に従事。その後、不動産テック企業の経営陣として、大手不動産会社や地方銀行を担当し、不動産情報・不動産ビッグデータの活用支援、不動産ポータルサイトや各種不動産サービスの企画、DX推進コンサルティングに携わる。
現在は、不動産・住宅業界を中心に、システム開発の構想策定、RFP策定、要件整理、ベンダ選定から開発プロジェクトの推進支援までを幅広く支援。大手住宅メーカーにおいては、新規システム開発の構想策定から候補ベンダの選定、ベンダコンペの企画・運営までを支援するなど、発注企業とSIer・システム開発会社の間に立ったプロジェクト推進を得意としている。
また、多くの不動産・住宅会社とSIer・開発ベンダとのネットワークを活かし、企業の課題や開発規模、技術要件に応じたベンダマッチングも実施。発注側の要望をそのまま開発会社へ渡すのではなく、業務課題や目的を整理したうえでRFPや要件へ落とし込み、発注企業と開発会社の認識を合わせる橋渡し役として支援している。
不動産・住宅業界特有の業務や商流への理解と、SIer・システム開発会社双方との実務経験を活かし、「何を作るか」から「誰と、どのように作るか」までを一貫して支援できることを強みとしている。













