DXを進めたい経営と、目の前の仕事に追われる現場


経営陣やDX推進部は、
夢見巳社長生成AIを試してほしい



新しいシステムを使ってほしい



業務のやり方を見直してほしい
と現場へ呼びかけます。
一方、現場から返ってくるのは、こんな言葉です。



そんなことをやっている暇はありません
今の仕事だけで手いっぱいです
試している間に、今月の目標が未達になったらどうするのですか
この反応を、単なる抵抗や意識の低さとして片づけてはいけません。現場にとっては、今日の締切、顧客対応、売上目標も守らなければならないからです。
DXを進めたい側と、目の前の業務を止められない側。多くの企業で起きているこのすれ違いは、「木こりのジレンマ」によく似ています。
刃こぼれした斧で、木を切り続ける木こり
DXや生成AIの活用でも、まったく同じことが起きます。
新しい仕組みを学ぶ時間がない。業務を整理する時間がない。小さく試す時間がない。その結果、非効率な入力、転記、確認、検索、報告を今までどおり続け、忙しさがさらに固定化されます。



つまり、「忙しいからDXができない」のではなく、DXに時間を使わないために、忙しい状態から抜け出せないのです。
DXの時間は、現場の善意だけでは生まれない



空いた時間で試してください
通常業務に支障のない範囲で取り組んでください
この言い方では、DXはほぼ進みません。忙しい職場に、自然に空く時間はないからです。さらに、通常業務の達成度だけで評価されるなら、現場が目先の仕事を優先するのは合理的な判断です。
DXに取り組む時間をつくるには、経営トップの覚悟と発信が必要です。
必要なのは、単に「DXは重要です」と宣言することではありません。
- DXに使う時間を、正式な業務時間として確保する
- その間に遅れる仕事や数字を、現場だけの責任にしない
- 管理職が優先順位を見直し、やめる仕事・減らす仕事を決める
- 小さく試した結果を評価し、学びを次へつなげる
ここまで明確にして初めて、現場は安心して斧を研げます。


変革には「何かを一時的に手放す」覚悟がいる



少し余談ですが、私は実は『進撃の巨人』が大好きです。
作中には、アルミンのこんな言葉があります。
「何かを変えることのできる人間がいるとすれば、その人はきっと大事なものを捨てることができる人だ」



この言葉好きなんですよ・・・
今まで続けてきた会議、報告、二重入力、過剰な確認、慣習的なルール。その一部をいったん止め、新しい方法を試す時間へ振り替えることです。場合によっては、短期的な効率や目標の一部を手放す覚悟も必要になります。
既存業務を一切削らず、失敗も許さず、今期の数字も落とさず、DXの成果だけを追加で求める――。それは変革ではなく、現場への上乗せです。
変えるためには、何を守り、何を一時的に手放すのかを、経営が決めなければなりません。
DXを伝える側も、木こりのジレンマに陥る
これは、現場だけの話ではありません。



私自身もDXや生成AIの活用をクライアントへ伝えながら、時折、自分自身が木こりのジレンマに陥っていると感じます。
日々の支援や資料作成に追われ、最新のAIツールが登場したことは知っていても、実際に触り、特徴や限界まで理解する時間を取れていない。そんなとき、「このままでは斧を研げていない」と危機感を覚えます。
そこで、短時間でも新しいツールに触れる時間を先に予定へ入れます。実際に試してみると、世の中で語られているほど万能ではないこともあれば、想像以上に便利なこともあります。危険性や、導入前に整えるべき体制も見えてきます。
DXを推進する側こそ、情報を知るだけでなく、自分で試し、学び直す時間が必要です。
問うべきは「できるか」ではなく「何を止めるか」
DXの会議では、「何を導入するか」「どの業務を効率化するか」が先に議題になりがちです。
しかし、本当に最初に問うべきなのは、次のようなことかもしれません。
- 誰が試すのか
- いつ試すのか
- その時間をつくるために、何を止めるのか
- 試行中の失敗や一時的な生産性低下を、どう扱うのか
- 経営と管理職は、どんな言葉で継続的に発信するのか



斧を研ぐ時間を予定に入れない限り、DXは「余裕のある人だけがやる追加業務」のままです。
まとめ
DXや生成AIが浸透しない原因は、ツールの機能や社員の意識だけではありません。目の前の仕事を止められず、改善へ使う時間を確保できない組織構造にあることも少なくありません。
変革に必要なのは、現場へ努力を求めることではなく、経営が「斧を研ぐ時間を守る」と決めること。そして、そのために何を減らし、何を一時的に手放すのかを示すことです。
株式会社いざなうでは、不動産・住宅業界を中心に、DX推進の方針整理、社内浸透、生成AI活用、人材育成をご支援しています。
「DXを進めたいが、現場に時間がない」「呼びかけても行動につながらない」と感じている企業様は、まずは現在の状況をお聞かせください。
お問い合わせは 株式会社いざなう ホームページよりお願いいたします。
記事の企画・監修
DXコンサルタント 蓼沼 康之(たでぬま やすゆき)
株式会社いざなう 代表取締役社長
<経歴>
不動産デベロッパーにて、DX推進部門の立ち上げと業務改革に従事。その後、不動産テック企業の経営陣として、大手不動産会社や地方銀行を担当し、不動産情報や不動産ビッグデータの有効活用支援、DX推進コンサルティングを手がける。
営業DXの観点から、見積もり、発注、不動産データの納品までを自動化するDXサービスを企画・ローンチするなど、事業開発にも携わる。
DXのグランドデザイン、生成AIの活用支援や導入コンサルティングの実績も豊富で、大手不動産会社から中小企業まで、企業規模を問わず幅広く支援している。業務効率化や営業支援、社内活用の定着まで、各社の課題に応じた実践的な導入をサポートしている。










