前編では、業務・利用量・会社のルールに合う生成AIを選ぶ「フィッティング」を紹介しました。道具が合ったら、次は学び方です。
せっかく研修を開いたのに、「難しくて分からなかった」という人と、「基本の説明ばかりだった」という人がいる。講師の説明が丁寧でも、受講者の現在地と目標が違えば、同じ内容では届きにくくなります。

※株式会社まちみらい不動産と登場キャラクターの会話は、一般的な課題を説明するフィクションです。
同じ研修で、違うところに困っている
でき未さんまず、どこに入力するんじゃ? 操作が追いつかん。
しっかり戌基本操作は分かるので、自分の業務に当てはめて試したいです。
整え鼠私は、社内の利用ルールや費用配分をどう管理するか学びたいのですが…。
3人とも、生成AIを仕事に役立てたい気持ちはあります。ただし、必要な学びは違います。入口の操作、業務に適用する練習、組織として支える運用。この違いを、参加者の熱意や能力の問題にしてしまうと、研修を直す手がかりを失います。
全員に共通する土台と、分けて深める内容を決める。研修を習熟度別に設計するときの、最初の考え方です。
まず「使っていますか?」の一問から抜け出す
研修前に把握したいのは、利用の有無だけではありません。毎日開いていても、短い質問しかしない人もいれば、週に数回でも業務資料を直している人もいます。利用回数は参考になりますが、それだけで習熟度を決めることはできません。
| 確認すること | 研修設計に役立つ見方 |
|---|---|
| どの仕事に使っているか | 一般的な質問から、実務への適用まで進んでいるか |
| どこまで自分でできるか | 入力、追加の指示、修正、確認のどこで止まるか |
| どこに困っているか | 操作の不安か、結果の品質か、運用や費用か |
| 何を任されているか | 個人の利用か、周囲の支援か、組織の管理か |
| どの承認済み環境を使えるか | 研修で学ぶ機能を、実際の職場でも使えるか |
自己申告の「初心者」「上級者」だけでなく、短い確認課題や業務の例も手がかりにします。年齢や役職、ITに詳しいかどうかだけで振り分ける必要もありません。
また、会社が提供していないAIの利用が分かった場合は、責めるための調査にしないこと。現状を申告しやすくし、承認済み環境へ移れるようにします。利用者が実態を隠してしまうと、必要な研修も契約も分からなくなります。
全員に共通する土台は残す
研修を分けても、入力してよい情報、承認済みのツールとアカウント、出力の確認、困ったときの相談先などは共通して押さえます。「上級者だから注意点は不要」とはしません。
IPAのデジタルスキル標準も、全てのビジネスパーソンを対象とする「DXリテラシー標準」と、DXを推進する人材の役割・スキルを示す「DX推進スキル標準」を分けています。[1] 本記事の研修区分はIPAが定めた区分そのものではありませんが、共通の基礎と役割に応じた学びを考える際の参考になります。

習熟度と役割に合わせて、目標を変える
分けるのは説明の難しさだけではありません。研修後に、何ができる状態になってほしいかを変えます。次の表は、考え方を整理するための例です。
| 対象の例 | 目標の例 | 学習内容の方向性 |
|---|---|---|
| 未経験・操作に不安のある人 | 承認済みAIで、安全に1つの作業を試せる | 入力、追加の指示、回答の確認、基本の注意点 |
| 日常利用者・ヘビーユーザー | 自分の業務に合う条件を伝え、結果を直して使える | 実務への当てはめ、資料の整理、複数案の比較、確認と修正 |
| 推進・運用を担う人 | 組織として利用を支え、費用と課題を説明できる | 利用ルール、権限、相談対応、利用状況、契約や費用の配分 |
ここで、推進担当は「最上級の操作ができる人」と同じ意味ではありません。組織の調整を担う人にも基本操作の学びが必要な場合があります。反対に、日常的に使う人でも、権限や費用管理を担当する必要がなければ、その研修をすべて受ける必要はありません。
習熟度は「どこまでできるか」、役割は「何を担うか」。この2つを合わせて考えると、受講内容の無理が減ります。
初心者には、完成品より「途中」を見せる
立派な完成資料を見せれば、便利さは伝わります。ただ、これから使う人には、そこに至るまで何をしたのかが見えません。
たとえば、短い文章の下書きを依頼したら、内容が少しずれていた。必要な条件を追加すると改善した。それでも固有名詞や事実は人が確認した。こうした一度で完成しない過程を見せると、AIとの付き合い方をつかみやすくなります。
いざな丑最初から上手な答えを出す競争にしなくて大丈夫です。何が足りないかを見て、追加で伝え、確かめるところまで体験しましょう。
初心者向けでは、機能を次々紹介するより、実際に手を動かして1つ完了できるようにします。ヘビーユーザーには、同じ操作説明の繰り返しより、業務上の難しい条件や確認の精度を扱う方が役立つ場合があります。
「AIが上手な人」と「教えるのが上手な人」を組み合わせる
使いこなしている人が、周囲への説明も得意とは限りません。本人は感覚的にうまく指示できても、他の社員が同じように再現できないことがあります。
逆に、業務をよく知る人が、AIの操作に詳しいとも限りません。そこで、業務の条件を言葉にする人、AIで試す人、手順を整理して伝える人を組み合わせる考え方が有効です。これは前編で紹介した「フォーメーション」とつながります。
一人の得意な人に、実行・説明・社内相談の全てを抱えさせない。研修の講師役を選ぶときにも、実演のうまさと、受講者に合わせて言葉を分けられるかを見ます。
満足度の先に、「実務でできたか」を置く
「分かりやすかった」「便利そうだった」という感想は大切です。ただ、それだけでは職場で使えるようになったかは分かりません。研修前に決めた目標に戻って確認します。
| 対象の例 | 受講後に確かめたいこと |
|---|---|
| 未経験・基本操作 | 自分で操作できたか。入力を迷ったときに相談できたか |
| 日常利用・実践 | 自分の仕事で試せたか。確認・修正の手間も含めて役立ったか |
| 推進・運用 | 利用状況や費用を把握し、困りごとに対応できたか |
時間を測るなら、AIの出力待ちだけでなく、前の資料準備、読み直し、確認、修正まで含めます。速くなっても、誤りが増えたり受け手の確認が増えたりしていないかも見ます。品質が上がったなら、その価値も別に確かめます。
また、試す業務や時間、必要な権限が用意されていなければ、受講しても実践につながりません。研修内容だけでなく、実務で試せる環境があったかも確認します。
研修は、ツールのフィッティングを見直す材料にもなる
試してみたら、今のプランで十分な人もいれば、業務上必要な機能が足りない人も見つかります。反対に、有料の追加契約より先に、業務資料や確認方法を整えるべき場合もあります。
利用実態を把握し、目標を決め、学び、実務で確かめ、また配分を直す。ツール選定と研修を一つの流れにすると、「アカウントを配った」「研修を開いた」の先を考えられます。
でき未さんワシには、まず安心して試せるところからじゃな。
しっかり戌僕は仕事で試して、うまくいった条件をみんなに説明できるようにします!
自社の社員に合う研修を、利用実態から考えませんか
対象者の区分、業務に即した題材、研修後のフォロー、費用配分は企業ごとに異なります。株式会社いざなうでは、生成AIの導入状況と現場の仕事を確認し、ツールの選び方から研修・定着まで、つながる形で整理します。
参考情報
公式情報の確認日:2026年11月7日。研修の区分・目標・確認項目は、本記事で提案する整理例です。
企画・監修:株式会社いざなう 代表取締役 蓼沼康之





