生成AIのおかげで、資料も文章も以前より速く作れる。なのに、仕事が終わるころには頭がへとへと。「便利になったはずなのに、なぜこんなに疲れるのだろう」と感じたことはありませんか。
AIを使いこなしている人にも、使い始めたばかりの人にも、考えてみてほしいテーマです。今回は海外の調査と実際の利用者の体験を手がかりに、AIとの付き合い方を整理します。

「AIを使うと疲れる」は、研究でも取り上げられている
BCGは、米国のフルタイム就業者1,488人を対象とした調査に関連して、AI利用者の14%が「AI brain fry」を報告したと紹介しています。AIの過度な使用や監視によって、自分が処理できる範囲を超えたと感じる精神的疲労を指す表現です。[1]
これは自己申告に基づく調査の数字です。「日本の会社でも14%が該当する」「AIと話すと誰でも疲れる」という意味にはなりません。また、ここでは研究者が使う表現として紹介しており、読者の症状を診断するものではありません。
それでも、AIで仕事が速く進むことと、人が楽になることは、分けて考える必要があると気づかせてくれる結果です。
実際の職場では、できる仕事が増えて「休む隙間」が減ることも
カリフォルニア大学バークレー校の研究者は、約200人の米国テクノロジー企業で8カ月間の観察と40件超のインタビューを行いました。そこで見られたのは、AIによって仕事の範囲が広がり、昼休みや夜にも指示を送り、複数の作業を同時に走らせる働き方でした。[2]
1社を対象とした進行中の研究で、あらゆる企業に当てはまるとは限りません。ただ、「これもできそう」と仕事を増やした結果、以前はあった区切りがなくなる、という問題は参考になります。
AIに慣れた利用者が、速さに負荷を感じた公開事例も
DoltHubのTim Sehn氏は、2026年1月の利用記で、複数のAIエージェントを動かす「Gas Town」を試した際、処理の速さと情報量にストレスを感じたと記しています。同氏は以前から、単一のAIとの作業でも自分でレビューやタスク管理を行っていました。[3]
これは開発現場での個人の体験であり、一般的なチャット利用の疲労を測った研究ではありません。それでも、負荷を感じる理由を「初心者だから」で片づけられないことが伝わる事例です。
手を動かす作業が減っても、「確かめて決める仕事」は残る
Microsoft Researchなどの研究者による、知識労働者319人・936件の利用例を扱った研究では、生成AIによって批判的思考の内容が、情報の検証、回答の統合、仕事全体の管理へと変化すると報告されています。一方で、AIへの信頼が高いほど批判的思考が少ないという関連もありました。[4]
つまり、この研究は「AIを使えば必ず頭の負荷が増える」と示したものではありません。作る負担が減る一方で、何を確認し、どう採用するかという役割は残ると読むことができます。
こうした研究を日常業務に置き換えると、次のような場面が考えられます。以下は研究の数値ではなく、編集部が一般化した例です。
- 読むものが増える:AIがすぐに長い回答を返すため、次々に読んで比較する。
- 小さな判断が続く:「この案でよいか」「修正するか」「もう少し調べるか」を繰り返す。
- 仕事の切り替えが増える:回答を待つ間に別の案件を始め、戻るたびに前提を思い出す。
キーボードを打っている時間だけでは、この負荷は見えにくいものです。自社のAI活用を振り返るときは、作業時間に加えて、確認や判断の流れにも目を向けたいところです。

いざな丑は、どうやってその時期を乗り越えたのか
ここからのいざな丑の体験は、研究者の提案や一般的な業務設計の考え方を参考にしたフィクションです。特定の方法で疲労が治ったという実証事例ではありません。
しっかり戌は、少し意外そうに尋ねました。
しっかり戌「いざな丑さんでも、AIを使って疲れていた時期があるんですか?」
いざな丑「ありましたよ。できることが増えるのが面白くて、返事が来たら次の指示。その待ち時間にも別の仕事を始めていました」
当時のいざな丑は、下書きができると、すぐに別案も頼み、表現を直し、関連資料まで作っていました。最初に何を終わらせたかったのか、途中で分からなくなることもあったのです。
いざな丑「私の場合は、AIに何を頼むかだけでなく、自分がどこで確認して、今日はどこまでで終えるかを考えるようになりました」
いざな丑は、途中の返事を全部追いかける使い方を見直しました。任せる作業の範囲を整理し、確認する場面を区切り、画面から離れる時間も予定に入れる。できそうな仕事が浮かんでも、すべてをその場で始めなくなりました。
いざな丑「今も、難しい判断が続けば疲れます。でも、そこで区切れるようになりました。それが、私なりに乗り越えられたと思うところです」
しっかり戌は、開きっぱなしだった別の作業画面を見て、うなずきます。
しっかり戌「できることを、全部いまやらなくてもいいんですね」
研究から考えられる、無理なく続けるための方向性
では、物語の外では何が言えるのでしょうか。AI疲れを確実に解消する方法としてではなく、働き方を見直す方向性として、次の点が参考になります。
1.途中の返事に、毎回反応しなくてよい流れを考える
バークレー校の研究者は、緊急性の低い更新をまとめて確認することや、集中する時間を守ることを提案しています。[2] 自社では、どの作業を途中で確認し、どの作業はまとまった段階で確認するのか。ここを整理する余地があります。
2.「できたら終わり」の基準を、仕事の目的に合わせる
次々に改善案を出せるAIとの仕事では、終える基準も業務設計の論点になります。これは本記事の実務上の提案です。下書き段階の細かな好みと、金額・契約・対外発信のような重要な確認を同じ重さで扱わず、誰がどこを判断するかを整理します。
確認を減らすことだけを目的にせず、重要な判断に注意を向けられる流れを考えることが大切です。
3.空いた時間を、すべて次の作業で埋めない
2022年のメタ分析は、22の独立した研究サンプル、計2,335人のデータを統合し、短い休憩に疲労軽減と活力向上の小さな効果を認めました。ただし、全体的な作業成績の改善は統計的に有意ではありませんでした。これはAI利用に限定した研究でもありません。[5]
英国の労働安全衛生庁HSEも、画面を使う仕事では短い休憩をこまめに取り、席を立つ、動く、姿勢を変えるといった過ごし方を勧めています。[6] AIの返事を待つ間を、毎回別の案件で埋める必要があるのか。仕事全体の流れから見直してみましょう。
4.会社も、「使った量」以外に目を向ける
職場では、成果物の数や短縮できた時間に加え、手戻り、確認の負担、担当者が休めているかも確認したいところです。AIを使う人だけに調整を任せず、仕事の量や確認の責任をチームで考えることを、本記事では提案します。
「慣れれば必ず疲れなくなる」とまでは分かっていない
今回確認した資料には、AIの使用や監視に伴う疲労の報告と、負荷を抑えるための提案がありました。一方、「半年使えば慣れて解消する」「使い続ければ脳が鍛えられて平気になる」と言える根拠や、特定の方法でAI疲れを克服したと検証された事例は、今回の確認範囲では見つかりませんでした。
バークレー校の提案も、その職場で疲労が解消したことを検証する介入試験ではありません。休憩の研究も、AI疲れに固有の治療法を示すものではありません。分かっている範囲を押さえながら、自分たちの仕事に合う使い方を考えることが現実的です。
頭痛を繰り返す、日中の強い眠気が生活に影響するなどの場合は、「AIに慣れていないだけ」と決めつけず、医療機関に相談してください。[7] [8]
AIを使い続けるために、人の仕事の流れも整える
生成AIは、仕事の可能性を広げてくれます。その力を活かすには、人が何を任せ、何を確かめ、どこで終えるのかも考える必要があります。
いざな丑「疲れたときは、仕事の進め方を見直すきっかけにしていいんです。人が続けられるペースも、一緒に考えましょう」
「一部の詳しい人に、AIの確認や判断が集まっている」「作業は速くなったのに、現場が楽になっていない」。そんなときは、導入したツールに加えて、役割分担や業務の区切りを振り返ってみませんか。
【余談】「脳の筋トレ」と呼ぶ、あるハードワーカーの話
最後に、少し余談を。営業DX設計室の「営業設計士 タデヌマ」は、株式会社いざなう 代表取締役・蓼沼康之本人を表すキャラクターです。ここからは、蓼沼本人の体験談を、いざな丑との会話に再構成してお届けします。
タデヌマAIを使う頻度が増えてきたころは、夕方になると強烈な眠気や、頭がへとへとになる感覚に襲われる日々が続いていたんですよ。
ところが、ある日を境に、あの疲れをまったく感じなくなりました。仕事そのものの頭の疲れも以前より減って、前より夜遅くまで仕事をしていても、バリバリ働けるように感じています。
自分では、これを「脳の筋トレ」と呼んでいます(笑)。
いざな丑AIに任せる範囲が増えて、ご自身で判断することが減った、というお話ですか?
タデヌマいえ、複数のAIを交互に回しています。むしろ、以前より短い時間で、多くの判断をしていますね。
いざな丑……ちなみに、タデヌマさんは、もともとハードワーカーです。かなり稀な例だと思いますので、「こういう人もいるんだ」くらいに受け止めてくださいね(笑)。
皆さんが同じようになることを、前提にはしないでくださいね。
でき未さん(心の声)
(うちの社長が、こんなハードワーカーの事例を真に受けませんように……)
しっかり戌(心の声)
(僕も、こんなふうになりたい……!)
同じ話を聞いても、まちみらい不動産の二人の受け止め方は、それぞれなのでした。
※蓼沼本人の主観的な体験談です。「脳の筋トレ」は本人の比喩で、脳機能の向上や疲労軽減の医学的な実証を示すものではありません。
参考資料・出典
公開情報の確認日:2026年11月1日。本文は各資料の要約と編集部の考察です。
- BCG, AI for CEOs: Amplifying Time and Judgment at the Top(2026年)。1,488人の調査とAI利用者の14%という報告を確認。
- UC Berkeley Haas, AI promised to free up workers’ time. UC Berkeley Haas researchers found the opposite.(2026年2月18日)。単一企業での観察・インタビューと、研究者の提案。
- Tim Sehn, DoltHub, A Day in Gas Town(2026年1月15日)。本人が公開した利用体験。
- Lee et al., The Impact of Generative AI on Critical Thinking: Self-Reported Reductions in Cognitive Effort and Confidence Effects From a Survey of Knowledge Workers, CHI 2025。DOI: 10.1145/3706598.3713778。自己申告による調査。
- Albulescu et al., “Give me a break!” A systematic review and meta-analysis on the efficacy of micro-breaks for increasing well-being and performance, PLOS ONE(2022年8月31日)。DOI: 10.1371/journal.pone.0272460。AIに限定しない休憩の研究。
- HSE, Working safely with display screen equipment — Work routine and breaks。英国の画面作業に関する一般的な指針。日本の法的義務を説明するものではありません。
- NHS, Headaches。
- NHS, Excessive daytime sleepiness (hypersomnia)。





